問題は「エクスプレイン」にある (2015/9/17)

今年の6月から、上場企業ではコーポレートガバナンス・コードなるものに準拠した報告書を出すことが義務づけられた。

重要事項の意思決定の方法や、顧客や従業員などのステークホルダーに対する取り組みなどがその内容だ。

報告の対象は主として投資家で、株式の売り買いをパカパカする短期投資ではなく、良い会社にじっくりと中長期的に投資することを促進しようとしている。

 

単純に規範に準拠せよということではなく、ガバナンス・コードで示されている原則を実施(コンプライ)するのか、実施しないでその理由を説明するのか(エクスプレイン)は企業が選択できる。

企業は経営の方針を明確にし、合理的な意思決定がなされていることを企業の外部者に示し、投資家も積極的に経営者と「顔の見える」コミュニケーションを図る。

経営成果を決める機微をどこまで言語化できるかという問題はあるにせよ、投資家と経営者がタッグを組み、中長期的によりよい企業にしていこうという、理屈上はまことによろしい取り組みである。

 

しかしながら、企業サイドでは、個性的な報告書をつくろうというより、なんとかボロを出さずに他社と同じような記述にしようという意識が働く。

ガバナンス・コードに従っている(コンプライ)ことにして、理屈に長けたアナリストから突っ込まれる可能性のあるエクスプレインは避けようとする。

自分が担当者でも、きっとそう考えるだろう。

 

ある決めごとに対し、その主旨を理解してうまく工夫しようとするのではなく、形式的な最低限の対応でお茶を濁す。

一方で、ある意図が決めごとと反している場合、それをシンプルに説明するよりも、決めごとの範囲内になんとか収まっている理屈を持ち出し、内部者同士の阿吽の了解でズルズルと決めごとをなし崩しにする。

内部的には反論しにくい空気をつくり、対外的には曖昧かつ形式的に報告する。

 

最近の東芝や数年前のオリンパスの粉飾決算問題、果ては無謀な戦争に踏み出し、終戦を先延ばしにした土壌には、このようなマインドがあるのだと思う。

日本人には(と一般化するのは危険と承知の上)、法律や規範を定めても、いつか組織の空気を優先させてしまう恐れが常に潜んでいる。

ガバナンス・コードしかり、安保法案しかり。

 

だから、決めごとを作っただけでは不十分である。

意図と決めごとが食い違ったときに、それが食い違っていることを素直に認め、それを論理的に説明しようとする努力、そしてその説明が論理的であれば受け入れようとする姿勢が必要だ。

そういうわけで、ガバナンス・コードを適用する上で、最も重要な行為は「エクスプレイン」だと考えている。

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