「いきなり!ステーキ」のビジネス関連発明 (2019.2.4)

「いきなり!ステーキ」がビジネスモデル特許をとったという記事に驚いたので、桜橋ビジネス勉強会で取り上げた。

スピーカーは製薬会社の研究部門にお勤めで、弁理士の資格を持つモリカワ氏。

同社の特許の内容やビジネスモデル特許を取り巻く現状について詳しく解説いただく。

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ちなみに、「ビジネスモデル特許」という呼称は正確ではなく、特許庁の文書には「ビジネス関連発明」とある。

ビジネスモデルはオペレーションを類型化したもので、企業の独自性を表現するものではない。

よって、特許に該当する仕組みについて一般的な用語を使うなら「ビジネスシステム」が妥当である。

 

さて、「いきなり!ステーキ」の特許の内容を簡単に記すと次のようになる。

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【請求項1】
お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、
お客様からステーキの量を伺うステップと、
伺った ステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、
カットした肉を焼くステップと、
焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップと
を含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、

上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、
上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量器と、
上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印と
を備え、
上記計量器が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと、
上記印が上記計量器が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする ステーキの提供システム。
(モリカワさん資料より)
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前段の青色部分は店舗スタッフのマニュアルのようなものなので、これだけでは特許にならない。

特許とは「自然法則を利用した技術的思想の創作」なので、ビジネス関連特許場合はIT技術を使うことが必要条件になる。

赤色部分にITシステムが組み込まれており、単なる人間の作業の置き換えではない進歩性が認められたということだ。

「札」「計量器」「シール」がITなのか?という釈然としないものは残るが、そういうことのようです。

***以下モリカワさんによる修正です***
「赤色部分にITシステムが組み込まれており、単なる人間の作業の置き換えではない進歩性が認められたということだ。」の部分ですが、
「赤色部分に技術的思想が組み込まれており、発明全体として技術的思想が組み込まれている為に「発明該当性」が認められたということだ。」のほうが正しいと思います。
裁判では、発明に該当するかどうか、が争われており、新規性・進歩性については論点になっていないからです。
(新規性・進歩性については今後(登録後も)争われる可能性はある)
また、札、計量器、シールがITやICTといえるのかどうかは怪しいのですが、特許庁ではICTという語句を用いていますので、備忘録中「IT」の部分は「ICT」を使った方が無難なのではと思いました。
「人為的取り決め」の対局が「技術的思想」であり、その具体例がICT(又はIT、装置など)という位置関係になると思います。
技術的思想かどうかは、具体的な技術的手段であって、それを用いることにより具体的に有用性を示すかどうか、で判断されるものと理解しています。
[モリカワさん、ありがとうございましたm(__)m]
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さて、今回の「いきなり!ステーキ」の特許の範囲は、保護される範囲がきわめて狭いとの指摘がモリカワさんからあった。

たとえば「立食」や「ステーキ」に限定されているので、着座の店やステーキ以外の食材では保護されない。

このような”ザルのような”「弱い」特許をなぜ同社は手間暇かけて取得したのか?

勉強会の議論はこの話題に収れんした。

 

そもそも、製品や製法に関する一般的な特許は、他社の模倣からの防衛が取得目的になる。

ある物質の加工において有効な機能を出そうとすると、他社の特許にことごとく引っかかる。

ゆえに開発を断念し、特許を持っている企業の優位が持続するといったことである。

だから「守れない」特許は意味がない。

 

一方で、企業が独自に磨いていったオペレーションの方法(=ビジネスシステム)は、なにがその肝なのかが外からは分かりにくいので、そもそも模倣されにくい。

たとえば、この勉強会でも取り上げたキーエンスの営業方法を、そのまま他社に移植しようとしてもうまくいかない。

セブンーイレブンのFCの管理の仕組みなども同様である。

そのような性格をもつビジネスシステムにあって、あえて内容を公開し、たいした守りにもならない特許をコストをかけて取るのは、なぜなのか?

 

「知財に対するあこがれ」という意見があった。

なるほど。これはまあ、ありそうである。

より合理的な意見としては、守りではなく「攻め」に活用するということ。

たとえば、「いきなり!ステーキ」をFC展開するときに、特許があればオーナーに対する説得力は増すであろう。

少なくともライバル社は丸パクリはできないし、国から認めれている「高度な」仕組みを持っていることを示すことはできる。

資金調達、店舗展開といった攻めの局面では、国家権力を背景にした「箔付け」にはなりそうである。

 

進歩が著しいAIの分野では、従来のような「守り」を目的とした特許申請も多いだろう。

いずれにしろ、「元気な企業」が取り組むべきものだ。

これから攻めるぞ!という経営の意志の表現方法として、また、ITに対する意識づけ方法としては、取り組む価値はありそうだ。


		

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