新事業が一人前になる通過儀礼 (2021.7.18)

土曜日の桜橋ビジネス勉強会では、レクサスを詳しく研究されているスギバヤシさんにスピーチをお願いした。

イノベーションは主たる事業の中ではなく、周辺から起こる。
新しい酒には新しい革袋を、という言葉もある。
新しい事業は、既存事業と切り離して運営した方がよいというのが一般論。
米国でレクサスブランド立ち上げたトヨタ自動車の事例は、まさにこの通り。
日本の本社が邪魔立てすることなく、米国の顧客が望むものをリサーチ結果通りに愚直に実現した、マーケティングの好例だ。

 

米国での成功とは裏腹に、レクサスを日本に導入したときには、トヨタの既存組織やディーラーとの調整などに、とてつもない労力を強いられた。
あたかも新しい酒を古い革袋に入れようとするばかりに。

 

グローバル市場から見れば、日本市場はそれほど”おいしい”市場ではない。
昨年度のレクサス販売台数に占める日本市場の割合は7%に満たない。
日本企業なのだから日本で展開するのは当たり前のように思えるが、無理して日本市場にアジャストさせる必要があったのか。
日本市場をパスして、生粋の米国ブランドとして、欧州や中国へ手を伸ばしていく方法もあったのではないか。

 

それでも、日本での展開を機に、コンセプトがより研ぎ澄まされ、グローバルで闘う素地が強化されたように見える。
日本のトヨタブランドとの関係をはっきりさせたことで、本気になって世界に進出する準備が整った。
競合車種とのポジショニングを考えると同時に、「トヨタ社内におけるレクサスとは何か」をはっきりさせることが、次の展開へ向けた必然的なステップだったと思う。

 

レクサスの事例で興味深かったことの一つが、主にトヨタの既存社員によって作り上げたこと。
もっとフレキシブルに、社外から人材を招き入れたり、M&Aなどで新たなリソースを獲得したりして、素早く変身していく方が望ましいという意見もあるだろう。
それは全くその通りだと思う。
そのようなことが可能な組織は、すでにそうしているはずだ。
多くの会社はそれができないから、新市場への進出に苦労している。
いささか鈍重な組織の慣性の中で、いかに異質な事業をマネジメントするのかが多くの会社の課題なのだ。

 

新ブランドや新事業は、えてして中途半端な零細事業のまま競争力を失っていく。
継続的な発展のためには、既存組織から人員などのリソースを移動させることが必要になる。
そのためには、既存事業との関係をはっきりさせ、よい協力関係を築かなければならない。
既存事業の社員は、それまでの経験に対する自負があるから、おいそれと新参者を受け入れない。
既存事業と新事業の関連や相互補完関係を時間をかけて議論して折り合いをつける、その調整過程が大事なのだ。
その過程を経て、新たな市場環境に適応した人財と組織に進化し、それぞれの事業の発展可能性を大きくする。

 

新事業は、既存事業との軋轢を避けて、箱入り娘のように育てることでは大成しない。
既存の事業とのコンフリクトに向き合い、それを克服する通過儀礼によって、一人前に育っていくのではないだろうか。

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