COMPANY's Dr. LOG

小説

第1話 目標さんの駆け落ち(その7)

その後しばらく、目標さんからは何の音沙汰もなかった。方針さんからは一度だけ、順調に進んでいますとの報告を受けていた。便りのないのはよい知らせ。きっとうまくいっているんだろう。目標さんの悩みを解決して、診療所としての役割は果たすことができた。
朝から温度がぐんぐん上がった真夏のランチ時、強い冷房の勢いに乗って、バッドさんが慌てた感じで話しかけてきた。

「グッドさん、聞いたかい。あの目標さんのこと」
「え? 何かあったんですか。方針さんともばっちりタッグを組んでうまくいっていると思うんですが」
「目標さんと方針さんが駆け落ちしたらしいぜ」
「ええっ!」と僕はコーヒーカップをひっくり返しそうになった。

「目標さんは、はじめて本当の自分をわかってくれる相手に巡り合ったって、社長を袖にして出ていったそうだ」
「で、社長は?」
「どうやら、方針さんへの理解がなかったようだな。そんな面倒なもんはいらねえと。目標さんがいればそれでいいじゃねえかと。目標さんはだいぶ反論したけどだめだったようだ。それで、方針さんと一緒にいられないならよそへ行きますと」
「まさか、本当に目標さんに嫉妬したんじゃないでしょうね。ゲットされそうになったのでビビったとか」
「いいや、あの目標さんのサイズじゃそう簡単に到達できるとは思わねえ。聞いた話だと、方針さんのような面倒なものを抱えるのは性に合わねえだと。そんなことは社長の仕事じゃねえと言っちまったらしい」
「目標さんを連れまわすことだけが、社長の仕事だと思っている人は多いですからね」
「まあ、それがあの社長の器だから仕方がねえな。身の丈に合わせた、もっと地味な目標さんをみつけることだな」
(了)

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