桜橋ビジネス勉強会で、大相撲の将来をビジネス観点であれこれ議論した。
今年は久しぶりの日本人横綱が誕生し、スター性のあるウクライナ出身力士も大関になった。
ファン層も広がり、順風満帆のようだが、重大な課題も抱えている。
新弟子の少なさである。
入門者が少なくなれば、取り組みの質が落ちる。
これは今に始まったことではなく、海外出身力士で何とかレベルを維持している状態である。
ありがたいことに、モンゴルや東欧には相撲に興味を持つ若者がいる。
格闘技としての相撲は洗練されている。
押し出す、倒すという、シンプルな基本動作で決着する。
100m走のようにわかりやすい、スピードと力の勝負である。
柔道やレスリングのような、素人目に難しい技の認定もない。
ボクシングのように「立てないほど打ちのめす」のような野蛮さもない。
また、防具もつけず、体重階級もなく、だれもが身一つで同じ土俵に立ち、純粋に「強さ」を競い合う。
このような「強さ比べ」にあこがれる若者が世界中にいることは想像に難くない。
しかしながら、日本の若者には人気がない。
相撲の力士は給料性で、横綱でも年俸3600万円。日本のプロ野球の平均年俸より低い。
懸賞金や(多分)表に出ていない収入なんかを含めても、多分1,2億円程度ではないか。
しかも幕下までは無給!である。奨励金や手当は出るが、年間100万円。
これでは入門者が少ないのは当たり前だが、大相撲協会がすぐに動くとは思えない。
協会の経営は順調で、力士引退後も年寄りとして働くことができる安定した組織。
無理してその均衡を壊す必要はない。
大リーグのようにストライキ戦術で給与を上げる手段もあるが、日本では世間が許さないだろう。
で、報酬による動機づけはひとまず置いて、力士の能力の卓越さを前面に表現して、世界中の「強くなりたい若者」を引きつける作戦を考えた。
たとえば、立ち会いのスピード、ぶちかましの当たりの衝撃の定量化。
「さすが、尊富士の立ち会いスピードは台風並みだね」とか、「高安の当たりは○ニュートンで、△を破壊するレベル」とか。
取組中でも、「ここは左の腕(かいな)の筋肉総動員で、一般人が5人くらいぶら下がっているのと同じ」とか、一瞬で決まった投げは重心移動が肝だったとか。
動作解析を駆使し、会場ではARも活用して力士の化け物ぶりに感嘆する。
「最も強い人類」の称号が横綱に与えられるなら、報酬とは別の動機付けでそれに憧れる人はたくさんいるだろう。
野球界では、日本人選手が世界ナンバーワンと言ってもよい時代になった。
来年のサッカーW杯で優勝しようものなら、日本人は羨望の的になる。
格闘技でも、相撲の横綱が世界一。
なんだ、極東のアジア人でもスポーツの頂点に立てるじゃないか。
そんな妄想で、今年の勉強会は終了である。
